循環器病予防部門 循環器病・生活習慣病予防への取り組み
効果的な保健指導の技法の開発
3-4. 効果的な禁煙支援の方法論の開発
岡山県にある財団法人淳風会健康管理センターと共同で、岡山県内の3社(いずれも製造業の工場)の健診の場を活用し、382名の喫煙者(介入群199名、対照群183名)を対象に、介入研究を実施した。介入群には、医師から禁煙の関心度に合わせた簡易な禁煙介入を1~2分程度実施した。
介入後6ヵ月間の禁煙試行率は介入群13.1%、対照群11.5%、6ヵ月後での断面禁煙率は各々5.0%、3.3%で、ともに有意の差ではなかったが、いずれも介入群の方がやや高い傾向がみられた。喫煙ステージ別にみると、熟考期・準備期において、禁煙試行率には差がなかったが、断面禁煙率では、介入群17.6%、対照群6.5%で、有意差はないものの、介入群の方が高い傾向がみられた。介入の効果を年齢、喫煙本数の影響を補正して調べるため、多重ロジスティック分析を行った。その結果、いずれも有意差はなかったが、禁煙試行率の補正オッズ比は1.15、断面禁煙率の補正オッズ比は1.56であった。喫煙ステージ別にみると、禁煙試行率の補正オッズ比は無関心期と前熟考期1.34、熟考期と準備期1.32、断面禁煙率ではそれぞれ1. 10、3. 41であった。
多重ロジスティック分析を用いて6ヵ月後の断面禁煙率を検討したところ、介入群と対照群の間で有意差はみられなかったものの、禁煙の準備性が高い熟考期・準備期においては補正オッズ比3.41と介入効果が示唆される結果であった。禁煙試行者の中で禁煙補助薬や禁煙治療を使った者は14名のうち2名(14.3%)と少なく、自力禁煙が大半であった。その理由として、対象とした3社のうち2社が所在する市では禁煙治療の登録医療機関がなかったこと、残りの1社については登録医療機関があるものの市内中心部から偏在していたことが考えられる。今後、健診の場での禁煙の勧奨の効果を高めるためには、禁煙治療へのアクセスの向上を図る必要がある。さらに禁煙治療の必要性や薬剤の効果についての教育啓発も必要と考える。
現在、対象者を増やして研究を継続中である。
- 図. 健診の場での短時間(1分間)の禁煙介入の効果-6カ月後断面禁煙率-
- 3. 効果的な保健指導の技法の開発