循環器病予防部門 CIRCS研究報告
<報告>NT-proBNPと病型別脳卒中発症との関連
NT-proBNPは心不全の状態を見るための血液検査として用いられており、また将来の冠動脈疾患や脳卒中を予測する検査指標としても知られ始めています。しかし、日本人において、NT-proBNPが将来の脳卒中のどの病型を予測するのかについては検証されていませんでした。そこで、本研究では日本人におけるNT-proBNPと脳卒中発症とその病型との関連を明らかにすることを目的としました。
秋田県井川町において2010年から2012年、茨城県筑西市協和地区において、2010年から2013年までに循環器健診を受診した20~95歳の男女4,393人を対象としました。NT-proBNP(pg/dl)は日本循環器学会、日本心不全学会の基準に準拠し、55未満、55-124、125-399、400以上の4つの群にわけました。Cox比例ハサードモデルを用いて、最長2016年までの脳卒中発症に対するNT-proBNPのハザード比を算出しました。調整変数は性別、年齢、体格指数、収縮期血圧、降圧薬の使用の有無、non-HDLコレステロール、推定糸球体濾過量、心房細動の有無としました。
平均4.7年の追跡期間中、50件の脳卒中の発症を認めました。NT-proBNPと脳卒中発症、特に脳梗塞発症との関連が認められました(下図)。この関連は、比較的軽度の異常値である125pg/ml以上のグループでも認められました。この研究によって初めて、西洋人よりもアジア人に比較的多い穿通枝領域の脳梗塞について、NT-proBNPの高値との関連が示されました。
この研究により、日本人において、NT-proBNPの軽度高値から脳梗塞発症リスクが増加している可能性が示されました。
この研究結果は、Journal of Atherosclerosis and Thrombosisという医学専門雑誌に公開されました(Ebihara K, et al. J Atheroscler Thromb 2020; 27(8):751-760)