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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>過体重と慢性筋骨格系疼痛との関連と高血圧による修飾効果

 過体重(Body mass index ≧ 25 kg/m2)であることは、慢性腰痛や膝痛のリスクを高めることが報告されています。一方、近年、高血圧は痛みを抑制することが示唆されています。過体重のある人は高血圧を合併することが多いのですが、これまでの研究では過体重と慢性腰痛や膝痛との関連に、高血圧が影響するかは明らかにされていませんでした。そこで本研究では過体重と慢性腰痛、膝痛との関連が高血圧の有無で異なるかを検討しました。


 CIRCS研究地域である秋田県井川町、大阪府八尾市南高安地区において2016年に循環器健診を受診された40~89歳の男女2845名を対象としました。慢性腰痛の有無は質問紙により確認し、国際疼痛学会の定義に準じて「過去1か月に感じた腰痛」でかつ「3か月以上続く腰痛」としました。痛みの重症度は、痛みが日常生活に支障をきたす場合は「より重症度の高い慢性腰痛」、支障をきたさない場合は「より重症度の低い慢性腰痛」と分類しました。慢性膝痛も同様に分類しました。


 過体重なしに対して過体重ありの場合の慢性腰痛、膝痛のオッズ比を高血圧(収縮期血圧140mmHg以上、拡張期血圧90mmHg以上、降圧薬の使用の1つ以上該当)の有無別に算出しました。なお、年齢、性別、地域、低身体活動、喫煙、飲酒、ストレス、抑うつ、職業、膝痛/腰痛合併の影響は統計的に調整をしました。


 過体重と「より重症度の高い慢性腰痛」との関連は、高血圧の有無で変化しました(修飾効果)。つまり、高血圧のない群においてのみ関連を認め、高血圧のある群においては有意な関連を認めませんでした(図1)。一方で過体重と「より重症度の低い腰痛」との関連についてはこのような修飾効果は認められませんでした(図2)。



 過体重と「より重症度の高い慢性膝痛」、「より重症度の低い慢性膝痛」との間の関連はいずれも高血圧による修飾効果は認められませんでした。(図3,4)



 この研究により高血圧者では過体重に伴う重症度の高い慢性腰痛が抑制されている可能性が示されました。痛みは本来、身体への異常を知らせる警告信号の役割があるので、過体重者の腰痛管理においては高血圧の合併に留意する必要があると考えられます。

 この研究結果はJournal of Epidemiologyという医学専門雑誌に公表されました。


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