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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>塩味を感じ取る力(味覚)と血圧値との関連

 食塩の過剰摂取が高血圧に関連することは明らかになっていますが、塩味を感じ取る力(味覚)が食塩摂取量や血圧値に影響しているかは明らかになっていません。本研究では食塩摂取に関する環境や嗜好が異なる大阪と秋田の地域住民の食塩を感じ取る力の分布を明らかにし、食塩を感じ取る力が食塩摂取行動と血圧値とにどう影響するかを明らかにすることを目的としました。

 CIRCS研究の調査地区大阪府八尾市南高安地区、秋田県井川町の2015年~2016年に循環器健診を受診した30~74歳の男女2,642人(秋田:1,254人、大阪1,388人)に、食塩がしみ込んだろ紙(ソルセイブ)を用いて塩味を感じ取る力を測定しました。何かしらの味を感じられる濃度を感知濃度とし、塩味を感じ取れた濃度を認知濃度としました。そして8つの食塩摂取行動(味付けが濃い、汁物・味噌汁等を1日2杯以上摂取、麺類の汁をほとんど全部飲む、塩蔵品を週3回以上摂取、かけ醤油・かけソースをする、漬物を1日2回以上摂取、週1回以上の外食をする、週1回以上惣菜を利用する)を点数化し、食塩摂取スコアとしました。感知・認知濃度をカテゴリー化し、食塩摂取スコア並びに血圧値との関連について、性別、年齢別、地域別に傾向性検定を行い、血圧値との関連を検討する際にはBMI、喫煙状況、エタノール摂取量を調整しました。解析対象者は2,223人(秋田男性427人・女性597人、大阪男性395人・女性804人)です。

 0.1%の低濃度で秋田・大阪とも男性の60%、女性の80%で何らかの味がすると感じ取ることができました(図1)。0.1%と薄い塩味を感じ取ることができたのは秋田男性20%、大阪男性15%、秋田女性32%、大阪女性21%でした。しかし秋田男性34%、大阪男性31%、秋田女性16%、大阪女性21%は1.6%の濃い塩味を感じ取ることができませんでした。(図2)

       図1.秋田・大阪での感知濃度(何らかの味を感じ取る力)の分布 -全年齢-


       図2.秋田・大阪での認知濃度(塩味を感じ取る力)の分布 -全年齢-


 秋田の30-59歳の男性では感知濃度、認知濃度と食塩摂取スコアとの間に正の関連が認められ、BMI・喫煙状況・エタノール摂取量を調整しても感知濃度、認知濃度と収縮期血圧値との間に正の関連が認められました(図3)。

       図3.感知濃度と認知濃度による収縮期血圧平均値 秋田30-59歳男性


 食塩摂取量の多い地域では、保健指導の際に塩味を感じ取る力を考慮した指導の必要性が示されました。

 この結果は、専門誌British Journal of Nutrition(2020年8月)に公表されました。


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