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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>内皮機能障害と慢性腎臓病の関連

 慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)患者は、一般集団と比べて、心血管疾患の罹患率と死亡率が高いことが報告されています。血管内皮機能障害は、動脈硬化症の初期段階において重要な要因であるとされ、CKDで認められる糸球体濾過率の低下においても重要な役割を果たしていることが実験結果から示唆されています。これまで、血管内皮機能障害が進行したCKD患者に多く認められることが報告されていましたが、早期のCKDのリスクと関連するかどうかについての研究はほとんどありませんでした。また、血管内皮機能を非侵襲的に血流依存性血管拡張反応(FMD:Flow Mediated Dilation)検査で評価して、CKDとの関連を詳細に検討した研究は行われていませんでした。そこで本研究では、日本人の地域一般住民において、FMD検査で評価した血管内皮機能障害とCKDの有病率との関連を検討しました。

 CIRCS研究地域である大阪府八尾市南高安地区と秋田県井川町の30~81歳の地域住民で、2013年~2017年に循環器健診を受診し、FMD検査に参加した男女1042名(男性537名、女性505名)を対象に、横断研究を行いました。血管内皮機能は、安静時の上腕動脈の血管径と、右腕を5分間駆血後に開放した際の上腕動脈の血管径とを比較して得られる、血管径の最大変化率(血流媒介性拡張)である%FMDで評価しました。%FMD が低いと血管内皮機能が低下しているとされており、%FMD 5.3%未満を血管内皮機能障害ありと判断しました。CKDは、eGFR 60(mL/min/1.73m)以下と定義しました。%FMD四分位により、研究対象者を第1四分位群(中央値3.9 %; 245名)、第2四分位群(6.2 %; 262名)、第3四分位群(7.8 %; 268名)、第4四分位群(10.4 %; 267名)、にグループ分けし、ロジスティック回帰分析を用いて、CKD有病率のオッズ比(OR:odds ratio)を算出しました。

 全対象者1042人のうち、CKDは62例(6%未満)でした。%FMD第4四分位群のCKD有病率オッズ比を1.0とした場合の各群のオッズ比(95%信頼区間)は、第3四分位群は2.02(0.68-5.99)、第2四分位群は3.56(1.27-9.94)、第1四分位群は3.14(1.10-8,93)と第2四分位群、第1四分位群有意な高値を示しました。この結果から、%FMD とCKD有病率とに有意な関連があることがわかりました。



 この研究により、地域の一般住民において、血管内皮機能障害はCKD有病率と関連する可能性が示唆されました。

 この研究結果は、Journal of Atherosclerosis and Thrombosisという医学専門雑誌に公表されました。


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