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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>頸動脈内膜中膜複合体厚および頸動脈プラーク性状と循環器疾患、虚血性心疾患、脳卒中病型別の発症との関連

 頸動脈超音波検査で調べられる頸動脈内膜中膜複合体が厚いことや、内膜中膜複合体が局所的に肥厚しているプラークが存在することは、虚血性心疾患や脳卒中、また両者を合わせた循環器疾患全体の発症のリスクを増大させることがこれまで欧米の研究で報告されてきました。しかしアジア人でも同様にリスクの増大に関与しているのかといったことや、脳卒中の病型別の発症との関連についてはこれまで明らかではありませんでした。

 そこで本研究では、CIRCSで1996年から2004年までに秋田県井川町、茨城県協和町、大阪府八尾市、高知県野市町で循環器健診と頸動脈超音波検査を受けた40~75歳の男女2943名のデータを用いて、総頸動脈の内膜中膜複合体厚、内頸動脈の内膜中膜複合体厚、頸動脈プラーク(内頸動脈の内膜中膜複合体が局所的に1.5㎜以上肥厚している場合と定義)の性状が、循環器疾患、虚血性心疾患、脳卒中病型別の発症と関連しているかどうかを調べました。CIRCSの研究グループでは、頸動脈の内膜中膜複合体厚が日本人の脳卒中や非出血性脳卒中発症と関連することをこれまでに報告していますが(Stroke. 2004;35:2788–2794)、本研究ではさらに長期間の追跡を行いました(追跡期間中央値 15.1年)。Cox比例ハザードモデルを用いて、年齢、性別、地域のほか喫煙の有無や収縮期血圧などといった代表的な循環器危険因子で調整した多変量調整後ハザード比を調べた結果、総頸動脈の内膜中膜複合体厚が大きいことは循環器疾患、虚血性心疾患、脳卒中全体、非出血性脳卒中、ラクナ梗塞の発症と有意に関連していることがわかりました。また、プラークの内部のエコー輝度が低輝度と高輝度が混在している不均一な場合にも同様にこれら疾患の発症リスクが増大することがわかったほか、内頸動脈の内膜中膜複合体厚についても同様の結果が得られました。これまで頸動脈の内膜中膜複合体やプラークの性状とラクナ梗塞の発症との関連を調べた縦断研究は米国の報告のみでしたが(Stroke. 2011; 42(2): 397–403)、本研究では初めてその関連があることをアジア人で示しており、欧米と比較して脳卒中の中でもラクナ梗塞の割合が高い日本人において非常に有用な結果が得られました。


       総頸動脈内膜中膜複合体厚4分位群ごとの疾患発症ハザード比


       プラーク内部均一性で分けた場合の疾患発症ハザード比


 頸動脈超音波検査は簡便で非侵襲的な検査です。この検査を用いて頸動脈内膜中膜複合体厚やプラークの内部均一性を調べることがアジア人において、循環器疾患、虚血性心疾患、脳卒中、非出血性脳卒中、ラクナ梗塞発症のハイリスク者を同定することに有用であることが、本研究の結果からわかりました。

 本研究の成果は、Journal of the American Heart Associationに掲載されました。


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