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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>心電図所見の変化と循環器疾患の発症について

 心電図検査は、検査を受ける人の負担が少なく、かつ簡便に多方向から心臓のようすを観察できる検査の1つです。1回の心電図検査に含まれる情報は、膨大なものですが、特に、虚血性の変化(ST-T変化など)は、循環器疾患の発症と関連し、見逃すことができない所見です。しかし、地域・職域における健康診断では、それ単独では自覚症状などに関連しない軽度の心電図異常が多く、病院受診や指導・助言につながらないことも多いと思われます。そこで、今回私たちは、心電図上の虚血性の所見の変化が、循環器疾患の発症とどのように関連するかを分析しました。その結果、虚血性変化が悪化した人と異常が続いた人は循環器疾患発症のリスクが高いと分かりました。


 以下に詳細をご紹介します。なお、本研究成果は、Heart Asiaという医学雑誌に公表しました。

 CIRCS研究の対象地域である秋田県、茨城県、大阪府、高知県の住民(40歳から69歳)の中で、私たちが行なってきた循環器健診を受診された方を対象としています。初回の健診(1975~1987年)を受診し、その翌年から10年の間に一回以上健診を受診した9374名を対象とし、地域ごとに2010~2013年まで循環器疾患の発症を追跡しました。

 心電図上の虚血性変化に関しては、心電図検査の判定によく用いられるミネソタコードの4と5のコードを用い、それぞれのコードで、異常なし・軽微な異常・大きな異常に分類し、初回健診時とその後の健診時との心電図異常の推移をみました。

 4コードでは、異常がなかった群を基準とすると、新規に軽微な異常が出た群の循環器疾患発症のハザード比が1.19(1.00-1.42)、軽微な異常から大きな異常へと悪化した群が1.57(1.15-2.12)、大きな異常が継続した群が1.87(1.42-2.47)と高値を示しました(図1)。




 5コードでも4コードと同様に、それぞれの群で1.42(1.19-1.69)、1.95(1.46-2.61)、2.56(1.95-3.36)と循環器疾患発症のハザード比(横軸)が高値を示しました(図2)。




 心電図検査における軽微な異常でも新規に異常を認める場合や、異常の度合いが悪化した場合には循環器疾患の発症リスクが高く、注意を要することが考えられました。また、大きな異常が継続していた場合は、特に発症リスクが高いと分かりました。



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