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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>地域住民における血圧とBMIの長期的推移

 高血圧は、日本人においては最も患者数が多い生活習慣病であり、脳卒中や心臓病などの循環器疾患を予防するうえで重要な課題です。また、食生活の欧米化とともにbody mass index(BMI;体格指数)が25 kg/㎡以上の肥満者の増加が懸念されています。そこで、この研究では、肥満者の増加が血圧値に及ぼす影響をみることを目的として、秋田県の農村における50年間の血圧値、BMI値の推移を観察し、高血圧の有所見率の長期的な推移を肥満の有無別に検討しました。


 秋田県井川町の1963-2013年の40~79歳の健診受診者延べ22,534人を対象とし、4~5年毎に11期に分け、収縮期血圧値(SBP)、拡張期血圧値(DBP)の年齢調整平均値(mmHg)の推移、BMIの年齢調整平均値(kg/㎡)の推移、高血圧(SBP≧140またはDBP≧90または降圧剤服薬中)の有病割合の推移を肥満(BMI≧25)の有無別に比較しました。


 50年間を通じて、健診受診率が高かった60歳代の結果を紹介します。男性のSBP/DBPの平均値は1963-66年の160/89 mmHgから1984-87年の141/83 mmHgへ一貫して低下し、その後は2009-13年の132/80 mmHgまで漸減・横ばいでした(図1)。女性も1963-66年の155/86 mmHgから1984-87年には142/82 mmHgに低下し、その後は2009-13の132/78 mmHgまで漸減・横ばいで推移しました。




 男性のBMIの平均値は1963-66年の22.2 kg/㎡から2009-13年の24.0 kg/㎡へ増加し、女性は1963-66年の23.1 kg/㎡から2000-03の25.0 kg/㎡へ増加し、その後2009-13年の24.5 kg/㎡へと漸減しました(図2)。




 図3に示すとおり、高血圧者の割合の推移は男女とも、血圧値と同様に1980年代にかけて大きく減少し、その後横ばいでした。肥満を伴う高血圧者の割合は、男性で1963-66年10.5%から1996-99年17.8%、2009-13年23.1%と漸次増加しました。女性でそれぞれ18.8%、29.8%、25.0%と90年代後半にかけ増加後、減少に転じました。肥満を伴わない高血圧者の割合は同じ時期で男性65.3%、40.8%、37.3%と一貫して減少、女性では47.3%、27.2%、28.7%と90年代後半にかけて減少し、その後横ばいでした。




 過去50年間で男女とも高血圧の有病割合は減少しましたが、肥満を伴う高血圧の有病割合は近年増加していました。また、男女とも肥満を伴わない高血圧の有病割合は減少しましたが、2009-13年の時点においても肥満を伴う高血圧の有病割合を上回っていました。高血圧予防の観点からは、減塩・節酒といった従来の対策をより強力に進めていくとともに、肥満対策を行っていくことが重要と考えられました。


 本研究の結果は、Journal of Atherosclerosis and Thrombosis,2017;24: 518-529に公表されました。


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