循環器病予防部門 CIRCS研究報告
<報告>アルコール摂取量と血管内皮機能障害との関連
多量のアルコール摂取は、動脈硬化性疾患の発症につながると報告されています。本研究は、動脈硬化発症の早期段階の現象である血管内皮機能の低下に焦点をあて、習慣的なアルコール摂取と血管内皮機能との関連を調べました。
CIRCS研究地域である大阪府八尾市南高安地区と秋田県井川町の2地域在住の一般住民で、循環器健診受診者30歳以上の男性410名を対象に、動脈血管内皮の拡張機能を評価するFMD検査(FMD:Flow Mediated Dilation、血流依存性血管拡張反応)を実施しました。この検査は、動脈硬化の器質的変化が起きる前段階の血管内皮機能を評価する超音波エコー検査です。安静時と負荷開放後のFMDを測定し、FMD値[%FMDの変化量 =(駆血開放後最大拡張径-安静時径)÷安静時径×100]を用いて、血管内皮機能を評価します。FMDの値が低いと血管内皮機能が低下していることを表します。解析においては、FMD値の3分位中の低値群(%FMD<5.3)をFMD低値者として、アルコール摂取量を非飲酒者、過去飲酒者、飲酒者(1合未満、1合~2合未満、2合以上)の5群に分け、FMD低値のオッズ比を算出しました。
非飲酒者と比較して、飲酒量が1合未満群と1合~2合未満群では、FMD低値のオッズ比(95%CI)はそれぞれ0.86(0.42-1.76)と0.98(0.45-2.12)でしたが、過去飲酒者と飲酒量が2合以上群ではFMD低値のオッズ比は1.76(0.69-4.50)と2.39(1.15-4.95)と高値を示しました(図1)。
過去飲酒者は、禁酒にもかかわらずFMD低値のオッズ比が高い傾向を示しました。その背景として、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化性疾患の療養のために禁酒をした方々が多く含まれている影響が推察されました。
本研究により、多量の飲酒は、動脈血管内皮機能障害のリスク因子である可能性を示されました。この結果はJournal of Atherosclerosis and Thrombosis 2016;23:000-000に公表されました。