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循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>ヘモグロビンA1c値と眼底出血リスクの関係

 糖尿病性網膜症は、毎年約1,500人が新たに視覚障害と認定される糖尿病の重大な合併症です。眼底出血の原因は様々ですが、進行した糖尿病性網膜症は大きな原因の1つです。眼底出血が黄斑と呼ばれる眼の重要な部分に起こると失明する危険性があり、眼底出血があった場合は早急な対応が必要ですが、何よりも眼底出血の発生を予防することが望まれます。


 これまでに日本では医療機関に通院している人を中心に、糖尿病性網膜症のリスクについて研究が進められてきました。しかしながら、医療機関にかかっていない人については、研究が少なく、危険因子の検討も十分ではありません。

 そこで、大阪や秋田の地域住民、大阪の職域の勤労者を対象に、健康診断で測定したヘモグロビンA1c(HbA1c)値(糖尿病の指標)とその後の眼底出血の発生率や危険因子を調べました(追跡期間の中央値4.6年)。


 次のグラフは、HbA1cレベル別の糖尿病性の眼底出血の発生率を示しています。健康診断の受診時の糖尿病の治療状況にかかわらず、HbA1c値が高いほどその後の眼底出血の発生率は高くなりました。全眼底出血の発生率も同様の傾向がみられました。



 この傾向について、年齢や性別などの眼底出血の発生に影響すると考えられる因子を考慮したところ、糖尿病の未治療者では統計学的に有意な差をみとめましたが、糖尿病の治療中の人では有意な差をみとめませんでした。糖尿病に罹患してからの期間が調整できていないことから今後さらに検討する必要があります。


 眼底出血の危険因子について、HbA1c値以外にも関係する因子があるかどうか、糖尿病の未治療者で検討したところ、糖尿病性の眼底出血は、喫煙でリスクが上昇していました。全眼底出血については、年齢、Body Mass Index値(体格の指標)、高血圧でリスクが上昇し、脂質異常症の治療でリスクが低下していました。


 この研究により、糖尿病の治療を受けていない人では、HbA1c値が高いほど糖尿病性および全ての眼底出血の発生リスクが上昇することが示されました。

 この結果は、2016年にJournal of Diabetes and its complications誌という医学専門雑誌に公表されました。


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