現在地
  1. TOP
  2. 病気予防への取り組み
  3. 循環器病・生活習慣病予防への取り組み
  4. 研究活動
  5. CIRCS研究について

循環器病予防部門 CIRCS研究報告

<報告>高コレステロール血症者に対する教育プログラムの
効果の検討 -8年間の追跡結果-

 国は1983年から老人保健法を施行し、各自治体における循環器疾患の予防を促進してきました。八尾市ではこれより早い1964年より高血圧対策を中心とした脳卒中予防対策を実践してきましたが、予防効果による脳卒中発症率の減少とは対照的に、心筋梗塞や狭心症などの冠動脈疾患の増加が目立つようになりました。これは戦後、生活習慣の欧米化が進むにつれ、高コレステロール血症者が増加したことが一因と考えられます。そこで、八尾市では高コレステロール血症の改善を目的とした食事、運動を指導する教育プログラム(健康教室)を実施しました。しかしながら、このような教育プログラムにどれほど効果があるのか未知数であったため、八尾市で実施された教育プログラムの効果を8年間追跡して検討しました(国際専門誌 Atherosclerosis 2002年164巻195-202項)。

 対象者は、1988年と1989年に健診を受けた方のうち、血清総コレステロール値が高く(240-299 mg/dl)、コレステロールを下げる薬を飲んでいない方104人が選出されました。この104人を無作為に2グループに分類し、一方をはじめの6ヶ月間で7回教育を受ける「教育回数の多い群」に、もう一方をはじめの1年間で2回だけ教育を受ける「教育回数の少ない群」に振り分け、その効果を比較しました。次のような目標を示した教育プログラムが保健師と栄養士により行われました。

<栄養指導の目標>

卵摂取は週2個以下。肉から脂肪を切り取るか赤身の肉に換える。鶏肉の皮は食べない。魚卵、イカ、エビの摂取は週2回以下。バターやマヨネーズをマーガリンと植物油に換える。野菜を毎日3回摂取する。大豆を毎日摂取する。成分無調整乳を低脂肪乳または脱脂乳に換える。甘いものの摂取を控える。

<運動指導の目標>

毎日30分以上活発に歩く。毎日10000歩以上歩く。






 図1はそれぞれの群の血清総コレステロールの平均値の推移を示しています。教育開始前の血清総コレステロール平均値は両群とも同程度でしたが、教育回数の多い群の方が教育回数の少ない群より6ヶ月、1年後の血清総コレステロール平均値が有意に低下しました。しかし、8年後の血清総コレステロール平均値は両群とも同程度で、一見すると、教育回数を多くしても長期的な効果が得られないようにみえます。しかし、図2を見てみると、8年後にコレステロールを下げる薬を服用している割合は、教育回数の少ない群の方が多い群より約1.7倍高いことから、服薬の影響により、教育回数の少ない群の8年後の血清総コレステロールの平均値が教育回数の多い群と同程度に抑えられていることがわかりました。以上より、6ヶ月間の集中的な教育プログラムの効果は初期に顕著に現れるのみならず、8年後においてもある程度持続するものと考えられました。



病気予防への取り組み